今回は、最適な睡眠を獲得するために、日常生活で注意すべき点や習慣化してほしい行動などを説明していきます。
▼目次
パソコン・スマホ
眼鏡屋さんが今すごく推しているブルーライトをカットするレンズがある。パソコンをする時にかけるメガネとも言われているので、PCレンズとも呼ばれている。
ブルーライトとは、人が見ることのできる紫外線から赤外線の間の青い波長の光のことを言う。
朝陽には青い波長の光が多く含まれ、夕陽にはあまり含まれていない。人はこの青い波長の光を浴びると覚醒するようになっているのだ。
パソコンやスマホなどの液晶画面からは、そのような青い波長の光がたくさん含まれているのである。
眠れないからとスマホを見ていたりすると、スマホの液晶画面から発生される光によって覚醒してしまう。
夜中にスマホに触れることはエスプレッソ2杯分の覚醒度合いと同じと言われている。注意が必要だ。
青い波長の光を午後や夜に見 てしまうと、人間の体のリズムが崩れる。もちろんそれを見ないのが一番いいのだが、見ざるを得ないときは、冒頭のレンズをするようにしよう。
さらにブルーライトはこれらの液晶画面からだけでなく、室内の蛍光灯などにも含まれている。夜に過ごす部屋の照明は、蛍光灯色ではなく電球色に変えるべきである。
エアコン
①暑くて眠れない
眠りにつくためには体温を下げていく必要があるのだが、熱帯夜だと気温が高いままなので体温が下がりにくく寝苦しくなる。また眠ってる間に汗をかくことで体温を下げるのだが、湿度が高いと汗が蒸発せず、やはり体温が下がらないので眠りが浅くなるのだ。
エアコンを使い、室温を26℃、湿度50~60%に設定し、布団の中を温度32~34℃湿度±5%に保てば、快適に眠ることができる。
エアコンのスイッチを寝る直前ではなく、数時間前から入れておく。エアコンをつければ部屋の空気はすぐに冷えるが、日中に温められた家具や壁は熱を持ったままだ。その状態でタイマーが切れると部屋が暑くなり、目が覚めてしまうのである。
寝入りばなに体温を下げて深い睡眠を獲得するためには、就寝時に室温を下げておく方が望ましい。眠る時にエアコンを我慢して眠ってしまい、後でエアコンをつけるのはあまり好ましくない。
最初に暑さで汗をかき、そのあとエアコンで冷やされると気化熱でさらに体温が下がってしまうため、目覚めに向けての体温上昇が起こらない。また、朝に体のだるさ・疲労感・眠気が残ってしまう原因にもなってしまう。
②寒くて眠れない
冬場の場合、最適な寝室の温度は16~19℃、湿度は50~60%になる。布団の中が10℃よりも低くなってしまうと眠りにくくなるので注意が必要だ。
また手足が冷えてしまうと末梢血管が収縮して放熱しにくくなり、目が覚めてしまう。お風呂などで手足を温めておくといいだろう。
頭寒足熱が眠りに適した状態なので、頭あまり温めないほうがいい。部屋全体を暖めると暖房費が高くなるので、湯たんぽなどを利用するのも一案だ。ただし、夜中に取りに行く人は、トイレに行っている間に体が冷えてしまうので注意が必要になる。
アロマ
アロマの香りを活用して睡眠を改善できる可能性がある。鎮静効果があると考えられている白檀・沈香・ラベンダーなどの香りは眠りやすくさせる効果が期待でき、ミント・ジャスミン・柑橘類・シナモンなどの香りには覚醒作用があると考えられている。
ただし、香りの好みは人それぞれ。同じ香りでも人によって違う反応が出る場合がある。
自分が落ち着く香り、元気になれる香りを見つけて、それを習慣化してみよう。そして、その香りを嗅ぐと眠るスイッチ、起きるスイッチが入れられるようになれば、入眠と起床が自然とできるようになる。
人は眠ってしまうと嗅覚が低下する。火事になっても目が覚めない人もいるように、においでは目を覚ますのは難しい。従って香り自体に睡眠に影響を与える力があるのではなく、起きてる時に心が落ち着いたり、気分転換になったりすることの効果の方が大きいようだ。
音楽
眠るまでに時間がかかる人は、音楽をかけながら眠りにつくという人もいるだろう。
音楽には覚醒調整作用がある。覚醒調整作用とは、眠くない時に落ち着く音楽を聴いていると眠くなり、眠いときに音楽を聴くと目が覚めてくる効果のことだ。
香りと同じように人によって効果は変わってくる。自分が落ち着く音楽、元気になる音楽を見つけると良いだろう。眠るとき、起きたい時に聴くと、入眠・起床に良い影響を与える可能性がある。
40デシベル以上の音は睡眠に影響を与える。40デシベルは図書館や深夜の市内の音だ。眠りに就いてからも音楽が流れていると睡眠の質が悪くなる。眠りについてからでは、自分で音楽を止めることができないので、切りタイマーを設定するなどの工夫が必要となる。
コーヒー・たばこ・アルコール
コーヒーに含まれているカフェイン、たばこに含まれているニコチン、アルコールは睡眠に影響を与える。止めてしまえばいいのだが、それもなかなか難しい人も多いと思う。ここではこれらの嗜好品とうまくつきあって、なるべく良い睡眠をとる方法を紹介する。
①コーヒー
カフェインには覚醒作用があり、睡眠を阻害する。さらに利尿作用があるため、深夜にトイレに行きたくなる。
カフェインの血中濃度の半減期は、正常な大人の場合、2.5~4.5時間。それを考えると寝る4~5時間前からは摂取を避けた方がいいだろう。晩御飯の後のコーヒーは睡眠には良くない。カフェインはコーヒーだけでなく、お茶やコーラなどのソフトドリンク飲まれているので注意が必要だ。
カフェインを口にしてから約45分以内に99%が小腸で吸収される。30~60分後に血中濃度が最高になり、そこで覚醒作用も強くなる。
これを利用して昼寝をする前にカフェインを摂り、昼寝からスッキリ目覚める方法がある。食後のコーヒーなどお腹に食べ物がある状態や、アイスコーヒーなどの冷たい刺激は、胃の活動を下げるので吸収が遅れる。
②たばこ
たばこに含まれるニコチンにも覚醒作用がある。ニコチンは眠りにつくまでの時間を長くし、浅い睡眠を増やし、深い睡眠を減らしてしまう効果がある。ニコチンを摂取すると脳に快感情が生まれ落ち着けるのだが、覚醒作用も高まってしまうので睡眠を阻害する。
ニコチンの体内における半減期は平均2時間なので、寝る前2時間以降の喫煙は控えた方がいいだろう。
③アルコール
アルコールには鎮静・催眠作用がある。適度な飲酒は眠りにつきやすくさせる。しかし、アルコールの代謝と排出が素早いため、睡眠の後半では眠りが浅くなり、中途覚醒も増加する。悪夢を見やすくなるという報告もある。
睡眠薬の代わりに寝酒をすることは睡眠の質を悪化させていることになる。寝酒が続けばアルコールがだんだん効かなくなり、量も増えて依存につながる。アルコール依存症患者は深い睡眠がほとんど得られず、中途覚醒も多い。入眠のための寝酒は避け、他の睡眠習慣を持つようにしよう。
食事
規則正しくバランスの取れた食事が、良い睡眠をとるためには大切だ。良い食事は人のリズムを規則正しくしてくれる。また、よく咀嚼することは、脳の活性化にもつながる。
食事ではメラトニンの原料となるトリプトファンを摂取しよう。トリプトファンはセロトニンを作って、それが夜には眠りを誘うメラトニンになる。トリプトファンは必須アミノ酸のひとつで、体の中では作ることができない。食べ物から取らなくてはならないのだ。トリプトファンは特に、大豆加工食品・乳製品・ナッツ類・魚・肉・鶏卵・バナナなどに含まれているが、偏った食生活をしていると不足してしまう恐れがある。
また、セロトニンを作る時には、ビタミン B 6が必要になる。大豆加工食品・バナナ・ニンニク・レバー・マグロ・カツオなどは、トリプトファンとビタミン B 6の両方を含んでいるので効果的に摂取できる。
①朝食
目覚めたばかりの朝は体温がまだ低い状態だ。まだ十分に機能できない段階の脳や体にエネルギーとなる糖質を補給する。朝食は体温を上げ、脳を働かせ、消化管の活動を促す。
きちんとした朝食をとることは、昼間の集中力を上げ、夜の睡眠に効果を出す。朝食をとらないと脳や身体へのエネルギーが足りなくなる。
トリプトファンを含んだ朝食をとる。和定食屋やハムエッグ定食を食べれば大丈夫だ。野菜サラダやジュースにあまり含まれていない場合があるので、注意しよう。
②夕食
夕食の消化には3~4時間かかる。従って、寝る3~4時間前までには済ませておくのが理想的だ。
夕食を食べると深部体温が上がり、後ほどやってくる体温の下降時の眠気を引き起こしてくれるが、夕食を食べ過ぎると深部体温が上がりすぎて、体が覚醒してしまい眠りの妨げになる。
③夜食
夜の遅い時間に夜食を食べてしまうと、体が消化のために働き、深部体温が上がり、よく眠れなくなる。また朝ごはんが食べられなくなり、翌日の午前中の活動にも影響を与える。なるべく食べることは避けたいところだが、どうしても食べる時は、低脂肪のタンパク質・お米・パン・芋類などの複合炭水化物を少量にしておく。ラーメン・丼ものは、脂肪が多く消化に時間がかかるので避けるべきだ。
④睡眠不足の時
睡眠不足の時は体に負担がかかる。胃から分泌されるストレスホルモンの一種であるグレリンが増加する。グレリンは空腹感を増進させるため、炭水化物や脂っこいものなどが食べたくなるのだ。
1日の睡眠時間を4時間に制限すると、2日後にグレリンが28%も増加したという研究報告がある。また4時間睡眠では、満腹感を脳に伝え代謝を高めるレプチンというホルモンも18%減少した。
睡眠不足の時はグレリンとレプチンというホルモンの作用が働いて食べ過ぎてしまい、太りやすくなってしまうので注意が必要だ。
運動
睡眠を改善するために運動を取り入れることは有効な手段だ。理想的には、寝る3時間前までに30分のウォーキングをすると良い。
運動すると深部体温が上昇する。上がった状態で、眠りを誘う脳内ホルモン・メラトニンの分泌が始まると、深部体温が下がる効果が発揮され眠気がやってくる。この深部体温の下降期の前に運動することが効果を出るのだ。
睡眠改善のための運動は朝や昼よりも、夕食後のあまり遅くない時間帯の方が効果的だ。夜に運動することが一番寝つきを良くし、深い睡眠が増え、熟眠度が上がり、日中の眠気もなくなる。
寝る直前の運動は、余分な体温と覚醒度を上昇させてしまうので避ける。夜遅い時間に運動をして汗を流すと、体温が低下して眠りにつくはずの時間に、体温が上昇する。さらに交感神経が刺激され、眠気がなくなってしまう。そのため、いつもの時刻に眠ろうとしても体温が下がるのに時間を要し、眠るのが遅くなってしまうだ。
また体幹を使った運動も、セロトニンを刺激し、セロトニン分泌に効果的だ。体幹とは胴体の深層部の筋肉を指す。スクワット・ゴルフのスイング・フラダンス・フラフープなどをすると体幹が鍛えられる。特に朝食前に5分でもこういった運動すると、一日の元気の素となるセロトニンが分泌され、元気に活動でき、それが深い睡眠を誘ってくれるのだ。