睡眠不足を判断する基準

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▼目次

布団に入って何分で寝てる?

自分の睡眠が足りているのかどうか、今ひとつ分からない人もいるだろう。自分が睡眠不足かどうかは、昼間に眠気があるかどうかで判断しがちだが、実はこの基準は間違っているのだ。

眠気がなければ、睡眠が足りているというわけではない。

我々の脳は、眠気にすぐ慣れてしまう。例えば、いつも午前0時に就寝している人が、1週間だけ午前1時まで起きるとする。すると1週間後には午前0時に感じていた眠気は、もう感じられなくなる。1時よりさらに就寝が遅れると、初めて眠いと感じるようになるのだ。これは単に眠気に慣れてしまっているだけで、睡眠が足りているわけではない。眠気がない場合でも、脳の活動が低下している可能性があるのだ。

自分が睡眠不足かどうかの正しい判断基準の一つは、寝つくまでの時間だ。

あなたは、寝床に入ってから寝るまでにどのくらい時間がかかっているだろうか?一瞬で眠れる、5秒で眠れる、と寝つきがすごくいい方は、慢性的に睡眠が不足している状態だと考えられる。

我々の脳は、目を閉じて眠るまでに少し時間がかかる構造になっている。通常、目を閉じてから寝るまでにかかる時間は10分程度。モヤモヤとまどろむような時間があり、徐々に意識を失って睡眠に入る。8分未満で寝てしまう人で、昼間に眠気があり、平日より休日の方が長く眠る傾向がある人は、「行動誘発性睡眠不足症候群」と診断される睡眠不足の状態である可能性が高い。

行動誘発性睡眠不足症候群の状態で、季節の変わり目で体調を崩したり、ショックな出来事があると、気分が落ち込んだり、そわそわ落ち着かなくなることがある。すると、深刻な睡眠のトラブルに発展する。

毎日変な時間に起きたり、以前のように眠れなくなったり、そんなトラブルが起こる可能性が高くなるのだ。場合によっては、医療機関等での治療が必要になってしまう。睡眠不足が慢性的になっていたとしても、対策を立てていればこうした事態をうまく避けることができる。

片足で30秒立てますか?

寝つきの他にも、今の自分が睡眠不足かどうかを知るお手軽な方法がある。まずは目を閉じて、片足立ちをしてみよう。30秒続くだろうか?

すぐにグラグラしてしまうようであれば、睡眠不足の可能性がある。

我々の体は、常に地球の重力に拮抗して体を起こしている。これを可能にしているのが抗重力筋だ。この抗重力筋は、セロトニンによってその活動が管理されており、睡眠不足になってセロトニンが不足すると、抗重力筋がしっかり働かなくなる。片足立ちの安定加減で、自分の睡眠がうまくいっているのかどうかが分かるのだ。

ちなみに、一目でわかる睡眠不足の人の特徴もある。それは、抗重力筋が働いていない姿勢をしているのだ。顎が上がり、胸よりも肩が前に出る猫背で、下腹部が前に出ていて、足の小指側に体重がのっている。こんな姿勢の人を見かけたら、その人は睡眠不足の人だ。もし、あなたが普段こんな姿勢をしていたら、睡眠の力を鍛えると自然と良い姿勢に変わるはずだ。

起床してから4時間後に眠気を感じる?

もう一つ、自分の睡眠がうまくいってるのかどうかを判断する基準がある。

それは、起床から4時間後に眠気がないかどうかだ。

起床から4時間後ということは、6時に起床する人は午前10時頃。実は、起床から4時間後は脳波の活動が活発で、1日のうちで最も創造性に優れ、頭がいいはずの時間だからだ。この時間は難しい問題に取り組んだり、新しい分野の学習に向いている。

起床4時間後に眠気があるということは、睡眠の質が悪いか、量が足りないということになる。

最適な睡眠時間は?

では、多くの人が知りたがってるであろう、最適な睡眠時間は何時間なのだろうか?

実は、最適な睡眠の長さは遺伝子によって異なるので、全ての人が1日に何時間睡眠すべきという基準はないのだ。また、睡眠時間は日照時間にも依存し、季節によって異なる。1年で最も日照時間が長い夏至と最も短い冬至の睡眠時間を比べた実験では、2時間程度差があるのが自然な状態という結果となった。

つまり、夏に6時間程度の睡眠の人は、冬に8時間程度眠るのは当然であり、一年を通して一律の睡眠時間を目指すこと自体が不自然なのだ。

さらに、睡眠時間は年齢によっても異なる。年齢を重ねるほど、必要な睡眠時間は短くなっていく。成人と同じ睡眠時間になるのは18歳頃なので、それまでは成人よりも長く眠るのが自然だ。また40歳を過ぎると、睡眠時間は徐々に短くなっていく。その理由は2つある。

1つは基礎代謝が低下することにある。人は寝ている時、かなり激しい代謝活動をしている。眠るのにも体力は必要なのだ。そのため、年齢が上がって代謝量が減ると、長い睡眠が維持できなくなり、必然的に睡眠時間が短くなる。

もう1つの理由は、記憶に関係している。睡眠中は、脳が情報処理をしている。未熟な年齢ほど日々初めて体験することが多いので、毎日学習することがたくさんある。当然、脳内に溜め込まれる情報量も多いので、情報処理に時間がかかる。年齢を重ねると、過去の経験で大抵のことは対処できるようになり、情報処理時間も短くてすみ、睡眠も短くなっていくというわけだ。

大切なのは、睡眠時間を一律に管理するのではなく、今の季節や今の年齢にふさわしい睡眠を作ることであり、そのために必要なのは、起床4時間後に眠気なしという判定基準や目覚めている時のパフォーマンスを判断基準にして、睡眠を評価することにある。

90分サイクルは真実なのか?

あなたは、睡眠が90分サイクルだという話を聞いたことがないだろうか?

この考えをもとにして、起きたい時間から90分を逆算して就寝時間を決めればすっきり起きられる、と認識している人もいるかもしれない。

睡眠のサイクルは、確かに約90分の周期があるが、これはただの平均値です。全ての人が90分サイクルであるわけではない。70分台の人から120分台の人まで様々。それを平均すると90分サイクルだということなのです。また、同じ人が毎日同じ時間のサイクルであるわけでもない。

例えば、あなたが90分サイクルのリズムを持っているとして、初対面の人にたくさん出会った日や知らない分野のことをたくさん学習した日には、睡眠中の情報処理には時間がかかるので、サイクルは90分よりも長くなる。さらに、嫌な出来事やショックな出来事を体験した日には、脳はその記憶を定着させないためにサイクルを短くする。たくさん頭を使った日にはぐっすり眠り、嫌なことがあった日には変な時間に起きてしまった、ということがないだろうか?

このように、我々の脳は、必要に応じて最適な睡眠を設計している。これを無理やり90分サイクルという概念に当てはめて睡眠を削ってしまうと、せっかくの睡眠の効用も台無しになる。

睡眠の仕組みを説明する時に、どうしても平均値を基準にして話すとわかりやすいので、メディア情報でも繰り返し90分サイクルであることを目にすると思う。ここからの説明でも、90分の倍数である3時間単位で変化する睡眠の仕組みなどが出てくるが、これはあくまでも平均値だと認識し、脳は毎日の生活に合わせて睡眠を設計していることを理解してもらえたらいいだろう。