睡眠覚醒リズム

▼目次

仮眠を活用

睡眠圧の仕組みでも登場した!脳に溜まる睡眠物質が作るリズムのことを睡眠覚醒リズムと言う。目覚めている限り、脳には睡眠物質がたまっていく。この物質によって、脳は1日に2回、起床から8時間後と22時間後に働きが悪くなるのだ。

6時に起床ならば14時と朝4時だ。実は高速道路の事故数の推移グラフを見ると、14時と朝4時に事故が多いことが知られている。これは山の事故や医療事故でも見られる現象である。人は起床から8時間後と22時間後にミスを起こしやすくなるのだ。

朝起きて夜眠る普通の人の生活の場合、起床8時間後の眠気は、ちょうど昼食後の眠気として自覚される。しかし、絶食をしたり、少量の食事を1時間ずつ取る条件にしても、同じ時間に眠気が見られることから、食事とは関係ないリズムであることが明らかになっている。

眠気がピークになった時に居眠りをしてしまうと、目覚めた後も頭がぼーっとすることがある。これは睡眠慣性という現象だ。睡眠も急には止まれないのである。居眠りをして深い睡眠に入ってしまうと、目覚めた後も頭がぼーっとする。そして、また居眠りを繰り返す。講義や授業中にそのような経験をしたことはないだろうか。酷い場合は頭痛になることもある。

睡眠慣性を防ぐために有効なのが、眠くなる前に先手を打って仮眠をする「戦略仮眠」だ。忙しい中でも成果を上げるビジネスマンがよく用いる方法である。高校で昼寝を取り入れたことで学業の成績が上がった、というニュースを耳にした人もいるだろう。

仮眠を有効に活用するためのルールは4つ。

ルール① 眠くなる前に仮眠
これは睡眠慣性を防ぐことが目的だ。眠気のピークで寝落ちするのではなく、あらかじめ眠くなる時間の前に、計画的に目を閉じて眠気を先に取り除く。睡眠覚醒リズムの眠くなる波が来る前に、リズムを低下させて、そこから覚醒する波に速やかに移行させるイメージだ。起床8時間後に眠くなるので、その2時間前の起床6時間後が目安になる。多くの人は昼休みくらいの時間に当たるだろう。

ルール② 時間は10~20分
仮眠は、その時間の長さによって効果が違う。
1~5分:スッキリした感覚になるが、睡眠物質は分解されない。
6~15分:睡眠物質が分解され、作業効率向上。
30分以上:深い睡眠のデルタ波が出現。夜の睡眠に影響が出る。
最適な仮眠の長さは、だいたい10~20分と言われている。環境的に仮眠が取れなくても、目を閉じることが出来れば同じ効果が得られる。目を閉じれば、脳波にアルファー波が出現する。脳は視覚を遮断しない限り休憩できないので、目を開けていると画像をどんどん取り込んで分析する。1分程度のちょっとした隙でも、目を閉じて効率的に脳を休めよう。

ルール③ 頭部を固定
頭がグラグラしていると、不用意に深い睡眠に入ってしまう恐れがある。ネックピローを使ったり、壁に寄りかかるなどして頭部を固定する。

ルール④ 3回唱える
「何分後に起きる」と、起きる時間を3回唱えて目を閉じると、その時間の数秒前に心拍数が上がり、体が起きる準備をすることが明らかになっている。有効な仮眠は、ゴールを設定することが大切なのだ。

この4つのルールをうまく使って、戦略的に仮眠を取れば、午後の勉強が格段にはかどる。これから集中しなければならない作業を始める時には、気合を入れるのではなく、先に眠っておくことをお勧めする。眠らなくても、目を閉じるだけで大丈夫だ。1分から5分間、目を閉じるだけでも、すっきりとした感覚を作ることができる。集中力が必要な場面が来る前に目を閉じる。これを習慣にしておけば、後から眠気に襲われることもなく、集中して作業することができる。

仮眠の前のコーヒーは有効

コーヒーに含まれるカフェインに、眠気を覚ます効果はない。脳にたまった睡眠物質が、脳を眠らせる働きを途中でブロックするのがカフェインの作用どからだ。カフェイン飲料を飲むと、眠気がなくなるのではなく、頭がぼーっとしたまま眠れなくなる。これでは勉強や仕事の能率は上がらない。

また、カフェインは飲んでから脳に届くのに約30分かかる。そして、いったん脳に到達したカフェインは、4時間から5時間滞在する。

眠気覚ましが目的でカフェインを飲むならば、必ず仮眠とセットにすることをオススメする。飲んだら眠ることが重要なので、まずコーヒーなどのカフェイン飲料を飲み、すかさず眠るのだ。6分から30分目を閉じていると、脳に溜まった睡眠物質は分解される。そして、目覚めたところにカフェインが脳に到達して、その後5時間眠気をブロックしてくれる。この飲み方なら、カフェインでしっかり眠気を予防することができる。

睡眠圧を高めることが成功の秘訣

睡眠圧のところで、「うとうとしてはいけない」と話をしたことと、この戦略仮眠は矛盾するのではないかと思われる方もいるだろう。重要なのは、睡眠圧を高めた上で戦力仮眠を取り入れることだ。

これには、睡眠を司るもう一つの仕組みであるホメオスタシスが関係している。ホメオスタシスとは、生命が一定の状態を維持する力で、人間の生理現象にはすべてこのホメオスタシスの原理が見られる。

例えば、徹夜をするとそのぶん猛烈に眠くなる。これは眠っていない反動で眠気が強くなっているので、通常の脳の状態を維持するホメオスタシスがしっかり機能しているのだ。 しかし、このホメオスタシスの働きが不十分だと、眠れなかった翌日もまた眠れないということになる。ホメオスタシスが機能してないところで戦略仮眠をしてしまうと、昼なのか夜なのかが分からなくなってしまい、ますます睡眠のリズムが乱れる。

そのような場合は、まずベッドの上にある睡眠の妨げになるものを排除する。メラトニンと深部体温のリズムを強化して、眠気を感じられるように睡眠圧を高める。その上で戦略仮眠を使って睡眠物質を分解、眠気をコントロールする。この順番で改善に取り組むのだ。

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