ヒット続く『鬼滅の刃』にオレは殺された

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 人気漫画『鬼滅の刃』の人気は凄まじい。2020年5月13日のコミックス第20巻をもってシリーズ累計発行部数6000万部を突破することは、ほぼ確定となっている。ブームは音楽シーンにも及ぶ。テレビアニメ主題歌『紅蓮華』のヒットにより、歌手のLiSAは『第70回NHK紅白歌合戦』に初出場。コミックも楽曲も広く世間が知ることとなった。

 運命の女神に祝福された人間には、幸運が訪れる。鬼刃の刃の大ヒットが正にそれである。作者自身はそのことに無頓着かもしれないが、妬み嫉みが渦巻いているオレの心中はただただ羨ましいという思いしかない。

「これでいくら儲かったんだろう?」

 そんな下世話な事しか考えられない。だから妬み嫉みが地層のように積み重なり、オレの心に堆積していく。そういう状態で、オレは書店で働いていたのだが、大ヒット作品だけあって、連日のように在庫の問合せがあり、店員はその対応に翻弄される。売上が伸びてウハウハだろ?なんて、簡単に考える人間もいるだろうが、実情はそうでもない。なぜなら、鬼滅の刃があまりにも売れたことで、どこの書店でも品切れ状態が続いたからだ。品切れしているときも毎日のように問合せがあり、「あの~在庫ありますか?」や「予約をお願いしたいんですけど…」などお客様対応に追われるので、やっている側からすれば迷惑でしかないのだ。しかしそれでも確かに売上は伸びたが、品切れ状態が続いたことにより、個人的なことを言わせてもらえれば、店長であるオレの評価は急降下していった。

 全国的に品薄状態が続いていたこともあり、「仕方ないよね」的な感想を大部分の書店員が抱いたことだろう。多くのまともな会社ならば、品切れ状態を良しとしてはいないが、多少は受け入れていたのではないか?しかし、オレが所属していた会社は違っていた。なぜなら、品切れ状態になったことは、店長であるオレの責任だと言い放ったのだ。

「どうして品切れしているのだ?注文はかけているのか?」
「はい。注文はかけていますが、出版社も在庫を持っていないようで、なかなか入荷してきません」
「だったら、お前が出版社に直接連絡して、在庫確保に動かないか!」
「出版社に連絡することはできますが、現状の仕組みではあまり効果はありません」
「どういうことだ?」
「現状の仕組みでは、出版社からの重版案内が届き、各書店が欲しい数を入れて送り返します。そこから、書店の販売力に応じた数が割り振りされて入荷してきます。ですから、欲しい数が必ずしも入荷してくるわけではなく…」
「だったら、売れるとわかっていたら、売れる前に在庫を確保しておくべきだろうが!!!」

 そんなことができたら苦労はしない。売れる商品は突然動き出す。気づいたときには濁流となって襲いかかってくる。しかし、会社の上層部はそれがわかっていない。計算には強いが、計算外のことには滅法弱い。だが、今回の鬼滅の刃の動きはまさしく計算外なのだが、どうも会社の上層部は計算できたと思っている節がある。だから話がかみ合わないのだ。会議では連日のようにやり玉にあげられ、オレの精神はどんどん疲弊していく。まったくもって不毛な時間だ。この時間をもっと有意義なことに使いたいと思う反面、この状況から逃げ出したいとまで考えるようになった。そうなってくると、モチベーションは低下する一方で、やる気もなくなる。

「どんな状況であっても、プラス思考で動くと状況を変えていくことができると思っている。だから、私も頑張れるんだ」

 オレが愚痴を言うと、直属の上司はそう励ましてくれる。だが、もうその励ましもオレの心には届かない。なぜなら、オレの心は穴が空いているからだ。そう…まるで虚のようにポッカリ空いているのでスカスカである。あ、画像を貼付しようと思ったが、著作権のことを考えて止めました。まあ、オレの心は完全に折れちまったので、会社を辞めることにしました。アニメやまんがが好きで書店で働くようになったのに、好きな物で仕事を辞めることになるとは…。想像だにしていなかった事態、まさに青天の霹靂である。いやあ、こんなことってあるんですね。

 とはいえ、なんか悔しいので、最後に少し鬼滅の刃をディスって締めたいと思います。

「こらあ!鬼滅の刃め!話は面白いが、品切れするほど面白くはないぞ!いたって普通だ、普通!なんでこんあ普通のまんがに、みんなどっぷりハマるんだ!?ちなみにオレはまんがよりアニメ派だ、この野郎!絵が少し微妙なんだよ!もう少し精進しろ、バカ野郎!」

 ちなみに、一部フィクションな表現がありますが、ほぼ実話です。
 支離滅裂な文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。