適切な睡眠には生体リズムを整えることが大切だ

睡眠不足を解消するには、規則正しい生活が必須である。そうすることで、人が持っている生体リズムが整うのだ。

①眠りを誘う脳内ホルモン・メラトニンの分泌リズム
メラトニンは、起きて太陽の光を浴びてから14~16時間後に分泌が始まる。そして、分泌が始まってから1~2時間後に眠くなる。睡眠中も分泌したいるが、目覚めが近くにつれ分泌量は減少する。

②副腎から分泌されるストレスを感じるコルチゾールが分泌されるリズム
人にストレスを感じさせるコルチゾールは、入眠前に減少する。睡眠中は低い値を示すが、目覚めに合わせて分泌量が増加し、起床時に最高値になる。

③1日の体温変化のリズム
人の体温は常に変化している。睡眠中の体温は低い。覚醒が近づくとだんだん上昇していき、午後4時頃にピークを迎える。そこから体温は下がり始め、睡眠時の体温になる。

④眠気の周期リズム
人の眠気は12時間周期でやってくる。午前2時がピークで、午後2時にも眠気がやってくる。午後の眠気は、昼食を食べていなくても発生する。

⑤体内時計リズム
人の体内時計は25時間。光や食事の時間など、外からの刺激に関わらないで生活すると、1日1時間ずつ眠る時間がずれる。ずれないようにするためには、朝起きたとき、太陽なの光を浴びることによりリセットされ、1日24時間の生活に合わせるのだ。

以下の章で具体的に説明する。

▼目次

朝の生活

起きて太陽の光を浴びると、14時間後に眠りを誘うホルモン メラトニンが分泌を始める。6時に起きた場合は6+14=20となり、20時からどんどん分泌を始める。つまり、何時に太陽の光を浴びたかで、その日の夜の何時に眠りやすくなるかが決まるのだ。

太陽の光と言うが、実際にどのくらいの光を浴びたらいいのかという目安がルクスという単位で表すことができる。

実は、外の光と部屋の光の明るさは比較にならないほど違う。太陽の光はものすごく明るく、快晴の時は10万ルクスという明るさであるが、曇っていても1万ルクスもある。それに対し家の中は500ルクスくらいなのだ。

こんなにも違う外と部屋の中の明るさに、私たちは全く気づいていない。なぜかと言えば、人の目は強い光を入れないようにする、とても高性能な作りになっているからだ。

朝起きたらカーテンを開けて外の光を部屋に入れてなるべく明るくしよう。本当は外に出て30分ぐらい太陽の光を浴びることが理想的だ。明るい環境にいることで、メラトニンの分泌が止まり、目が覚める上に体内時計もリセットされる。

さらに体を起こすと目が覚める。時間を特に守る必要のある電車の運転手は、起きる時間になると自動で頭が持ち上がる特別なベッドに寝ている。頭が縦になると目が覚めるからだ。

次に水分補給だ。よく人は眠ってる間にコップ2杯分の汗をかくと言われている。本当は呼吸によって排出される水分の方が多いのだが、とにかく朝は体が脱水状態になっている。脱水状態は体に良くないので、水分補給はどうしても必要になってくる。

水は常温で飲むのが良い。冷たい水の方が目が覚めそうだが、ずっと眠っていた直後の体には刺激が強すぎるからだ。また、口からではなく目から水分を補給する、つまり目薬をさすことも目覚めのためにはとても有効である。

朝食を食べることも覚醒や体内時計のリセットに効果がある。起きてから1時間以内に明るい部屋で朝食をとると良い。咀嚼をすることで頭に血が巡り目が覚める。スープや味噌汁など温かい食べ物は、体温を上げて体が活動する準備をしてくれる。熱めのシャワーを浴びることも同様の効果がある。

昼の生活

セロトニン
昼間は、なるべく明るい場所で過ごし、体を動かすことが大切だ。

脳は3000ルクス以上の明るい環境にいると、昼間だと認識してくれる。昼間だと認識している間は、セロトニンが分泌する。昼に作られたセロトニンを原材料として、眠りを誘うメラトニンが作り出されるのだ。

ちなみにうつ病の人は、セロトニンが足りていない。うつ病心の風邪と言われているが、うつ病は眠れるようになりさえすれば、心の部分は落ち着く。しかし、眠れないことがうつ病を長引かせる。セロトニンが足りなければ、メラトニンが作れないので睡眠が不足してしまうからだ。

うつ病と不眠は密接な関わり合いがある。誰でもうつ病になる可能性があるのだ。元気がないなと自覚すると活動が下がってしまい、眠れなくなる。するとさらに心が疲れて、活動自体ができなくなるのだ。だから昼間に太陽の光をたくさん浴びて、活動量を増やすことで、よく眠れ、また高いエネルギーを獲得することができるのだ。

メラトニンを分泌し始めると、体温が下がってきて眠気を引き出してくれる。しかし、起床してからほとんど動いていないと、体温が上がらないので、その状態でメラトニンが分泌を始めても、そんなに体温は下がらない。体温の下降が無ければ、入眠が深い睡眠が難しくなるのだ、昼間は元気に活動をして体温を上げておくことをおすすめする。

②昼寝
眠気の周期は12時間なので、通常は午後2時くらいに眠気がやってくる。お昼ご飯を食べると眠くなるが、実は食べなくても眠くなる。この時間に昼寝ができる人は、頑張って昼寝をするとよい。

昼寝をする場合、時間に注意が必要だ。通常午後3時を過ぎた遅い時間に昼寝をすると、夜よく眠れなくなってしまう。また30分以上眠ってしまうと、深い眠りに落ち、やはり夜の睡眠を阻害するのだ。

昼寝を取れない人にオススメなのは、パワーナップと呼ばれる短い昼寝だ。1分~10分くらいの時間集中して眠る昼寝のことだ。できたら暗くて静かな場所で、重力から解放される横になった状態が理想的だ。眠くなってからでもいいのだが、眠くなる前に短い昼寝をしておくと、午後の眠気をやり過ごすことができる。

夜の生活

①食事
夕食を早めに済ませる。消化は大きなエネルギーを使うので、胃袋の中に食べ物がない状態で寝ないと、胃に大きな負担がかかってしまう。お腹いっぱいで眠るのは、アクセルとブレーキを一緒に動かしてるのと同じような状態となり、体が混乱してしまうからだ。

食事は睡眠の4時間前に済ませておく。そして、もし眠るまでにあまり時間がない場合は、カツ丼など重い食事を控え、できるだけ消化の良いものを少量を取るようにするとよい。

食後にコーヒーを飲む機会もあるだろう。コーヒーは覚醒作用がある飲み物なので、普通なら眠れなくなるのに、いくらコーヒーを飲んでも眠いという人は、疲労物質がたまりすぎて、カフェインの覚醒作用よりも疲労の方が上回っているからだ。

カフェインは効果が4~5時間と長いので要注意だ。寝つきの悪い人はまだ眠るまでに時間があるからと安心せず、できるだけカフェイン摂取は控えた方がいいだろう。

②アルコール
お酒を少し飲んでから布団に入ると眠りにつきやすいという説がある。確かに最初の寝つきはいかもしれないが、これはあまりおすすめできない。

アルコールは3時間ぐらいたつと肝臓で分解が始まる。眠る時は体温を下げなければならないが、アルコール分解は血圧や脈、体温を上げる逆作用を起こしてしまう。 飲み会などで深酒した時、翌朝意外に早く目覚めるという経験をしたことはないだろうか。これこそアルコール分解による覚醒作用なのだ。

どうしても眠れない人は、医師に睡眠薬を処方してもらった方がいいだろう。現在の睡眠薬は、脳の機能を停止するような強いものではなく、目覚めさせる機能をブロックする、体に影響の少ないものが増えてきているので、信頼できる専門機関に相談してみると良いだろう。

③入浴
上がった体温が下がると眠気がやってくる。就寝前の入浴は体温を上げるラストチャンスだ。

1日あまり活動できなかった人には特に重要。ポイントはぬるめのお湯に長めに浸かることだ。熱いお湯に長く入っていられない。温度が高くてもお湯に浸かってる時間が短いと、体の芯まで温めることができない。うっすらと額に汗をかく程度がちょうどいい長さである。

それから入浴するタイミングも大きなポイントである。お風呂から出た後、すぐに布団に入ってしまうと体が熱すぎて眠れたものではない。入浴後、少し体を冷ましてから布団に入ると入眠しやすい。冬場だと30分ぐらいでちょうどいい感じになるが、気温が高い夏場は2時間ぐらいかかる。気温を考慮して入浴のタイミングを図ろう。

睡眠をとるためにはリラックスする必要がある。自律神経は自分の意志とは関係なく働く神経であるが、活動する交感神経と休む副交感神経に分かれている。眠るためには副交感神経が優位になってもらう必要がある。寝る前の熱い風呂や激しい運動は、交感神経を刺激するので避けなければならない。

また、日中のストレスが多い状態が続いてリラックスできないと、ストレスを感じるホルモン・コルチゾールの分泌が減少せずに眠れなくなる。 自分なりのリラックスする方法を見つけておくこと良い。