睡眠の質を確保する簡単な方法

明日のためにちゃんと眠りたいのになかなか眠れない、とお悩みのあなたに、ここではそうした場合に眠気を呼ぶ方法を紹介する。

▼目次

耳から上を冷やす

寝付けない時は、考え事をすると思う。「明日の商談を何としても取らないと」、「上司をどうやって説得すればいいか」など具体的な考えがぐるぐるし始めると、ベッドの中でどんどん頭が冴えてくる。

こんな時は、脳を単なる内蔵として扱う。考え事が出てきたということは、脳の温度が高いということだ。温度が高くて睡眠に入れないならば、温度を下げれば良いのだ。

眠る前には、テレビやスマホを見ないように、という話を聞いたことはないだろうか?テレビ、スマホ、パソコンなどの画面を見ると、脳内ではノルアドレナリンという物質が増え、脳の温度が上がる。

ノルアドレナリンは、脳を目覚めさせる役割の物質だが、同時に不安や焦りを生み出す。このまま眠れなかったらどうしよう、いい加減眠らないと、という気持ちになり焦ってくる。深夜にSNSで他人の投稿を見たり、ネットニュースを見ると、苛立ったり焦ったりという経験がある人も少なくないはずだ。これは、性格やストレスのせいではなく、ノルアドレナリンという物質の仕業だ。物質の仕業だとわかればしっかり対処ができる。

温度が上がるのは、大脳という部位だ。大脳はちょうど耳から上あたりに位置している。そこで寝付けないと感じたら、直前まで画面を見ていた時は、保冷剤などを使って耳から上の頭を冷やす。また、乾いたタオルを冷凍庫に入れておき、冷えた状態になったタオルを枕の上半分のところに置くなどして、実行しやすい方法で試してみるのだ。

この時、耳から下の首の辺りが冷えないように注意する。首の辺りには脳幹という生命維持を担う部位があり、ここが冷えると危険な状態と認識し、脳が目覚めさせてしまう。冷やしていいのは耳から上だ。眠れない時には性格や心理的なことではなく、あくまでも物質の作用だと認識するのだ。

足首を温める

ここ最近、足首の冷えが原因で、睡眠の質が悪い人が増えてきている。アンクルパンツやスニーカーソックスで、足首を露出するファッションが増えてきた影響もあるだろう。ただ、おしゃれを健康より優先したとしても、冷えてしまったらしっかりケアをしておくことが大切だ。

会社でも家でもなんだか元気が出ない、いつも疲れている…このようなだるさの原因は、足首の冷えで夜の睡眠の質が低下しているからである。眠る前にくるぶしを触ってみて、そこが冷たかったら、その晩はぐっすり深く眠れるというサインだ。これには、睡眠の質を決める深部体温リズムの仕組みが関係している。

人間の体は、足首が温まると足の裏に汗をかく。その汗が蒸発すると気化熱によって血液の温度が下がる。そして、温度が下がった血液が内臓を巡ると深部体温が下がって深く眠るという仕組みだ。簡単に言えば、足首を温めればぐっすり眠れるということである。

就寝前に入浴する習慣がある人は、足首が温まったら冷えないように、レグウォーマーを履いておく。いらない靴下の先を切ったものでも構わない。そのまま眠れば、足先からグングン放熱し、深部体温が下がる。靴下を履いて眠ってしまうと、汗をかいても気化熱が生じなくなってしまうので、足先か足の裏半分は露出されていることが条件だ。シャワー浴しかしない人は、必ずシャワーを10秒ずつくるぶしに当ててからシャワーを終えるようにする。

なお、レッグウォーマーにはむくみの改善効果もある。我々は普段、地球の重力を受けて生活している。すると、体の水分は足側に溜まっていく。本来、この水分は、ふくらはぎの筋肉が運動することで、吸い上げられて体の中を循環するのだが、座りっぱなしや立ちっぱなしの仕事をしていると、ふくらはぎの運動が極端に減る。これがむくみの原因なのだ。

むくんだ足の水分は、夜間睡眠中に足の裏から排泄されなければならない。しかし、足首が冷えていると、睡眠に向けて汗で体温を放熱することができないので、むくみは解消されない。レッグウォーマーでむくみが改善したのは、足首を温めて眠ったことで、睡眠中に足の裏からの水分の排泄ができたからだ。むくみで悩んでいる人は、就寝前に足首を温めレッグウォーマーで保温しながら、眠る方法を試してみるとよい。

首と仙骨を温める

睡眠の質は自律神経とも深く関係している。効率よく睡眠の質を高めるために、簡単ではあるが自律神経について説明しておく。

自律神経は、我々が活動的になる時活発になる交感神経と、リラックスしている時に高まる副交感神経がある。この二つの神経が相反するシーソーのような関係にあり、我々の体のバランスを保っている。

自律神経には1日のリズムがあり、朝目覚めると交感神経の活動が高まり、日中は交感神経が優位な状態となる。夜になって就寝する時間になると、交感神経も副交感神経の働きが低下する。ここで交感神経の方が大きく低下するので、副交感神経と入れ替わり副交感神経が優位な状態となる。そして、睡眠中には副交感神経が優位な状態が続く。

このように朝と夜の1日2回、交感神経と副交感神経が入れ替わる時間帯があるのだが、この入れ替わりがスムーズにできないと、朝になっても起きられず、夜になっても眠れないという事態に陥ってしまう。眠れない時には、副交感神経の活動を促進させるというように、自律神経の入れ替わりを促すことをしなければならない。

副交感神経の活動を高めるには、副交感神経が集まる部位を温めることだ。 副交感神経が集中する神経節は、首と仙骨という骨盤の真ん中にある逆三角形の骨にある。就寝30分前を目安に、この部位を温める。レンジでチンするホットパックや湯たんぽを使うと温まりやすい。電気毛布やカイロを貼ると一定の温度に保たれてしまい、眠る前の深部体温の低下が妨げられるので、必ず冷えるものを使う。

睡眠中は、本来、交感神経の活動が著しく低下する。ところが気温が下がると、交感神経活動が高まったままで睡眠に入ってしまうことがある。すると、腎臓交感神経の働きも高く保たれ尿を作りすぎてしまい、その結果、トイレで目覚めてしまう。就寝30分前を目安に仙骨を温めると、夜中にトイレで目覚めずに済む。

また、徹夜をする時や長時間勉強しなければならない時、交感神経活動が活発になるので、仙骨を温めて体のバランスを取るようにしよう。自律神経のシーソーの振り幅が少なくなれば、それだけダメージを最小限に抑えられ、体も回復しやすくなるのだ。

「垂直」と「水平」

ハードな生活スケジュールでは、短時間の睡眠でもしっかり体を回復させたいもの。そんな時には戦略仮眠を活用するのだが、仮眠を取る場面でも、深く眠らずに眠気だけを効率的に取り去りたい場合と、体の疲れもしっかり取りたい場合がある。目的が違う場合は、仮眠の取り方も変えなければならない。

戦略仮眠では座ったまま、ネックピローなどで頭部を固定する方法がある。重力に対して脳が垂直になっていると、深い睡眠には入らない。これを利用して仮眠をしても深くは眠らずに、夜間の睡眠の質を確保できる。ネックピローの選び方にポイントがある。Uの字型で、装着した時に頭を左右に倒すことができるものは適していない。装着すると顎が肩に乗っかるように、肩から顎の間がしっかり固定されるものを選ばなければならない。

では、短時間でも体の疲れが取りたい時にはどうすればいいのだろうか?我々の体は常に重力の影響を受けている。我々は重力に抗して体を起こしているだけでも筋肉は活動している。効率的に体を休めるには、この重力に対抗して活動している筋肉を休めることが大切だ。そこで重力の影響を少なくするために、できるだけ体を水平にするのだ。ソファーや椅子でしか眠れない時には、クッションに寄りかかって上半身を起こさずに、できるだけ体をフラットにする。疲れをしっかり取りたいときは、できるだけ体を水平にするように注意して仮眠をとるとよい。

うつぶせね寝の効用

さらに、効率よく脳と体を回復させるには前傾側臥位(ぜんけいそくがい)という、横向きから前によりかかったような姿勢で仮眠する。

人間はもともと四足動物ので、うつぶせ寝が適した構造になっている。ただ、うつぶせ寝というとマッサージを受けている時のように、まっすぐ顔を埋もれさせる姿勢をイメージするかもしれないが、そうではない。

顔を左右向きやすい方に向けて、枕の端に顔を乗せ、顔を向いた側の腕を曲げて、向いていない側の腕を体につけるように伸ばす。腕を曲げた側の胸の下に枕かクッションを入れる。この姿勢で眠ると最初から深く眠りに入ることができる。

さらに、重力が身体の後ろ側からかかると、喉の筋肉が体の前側に下がるため気道が開く。これで眠り始めの呼吸量が増えるので、深い睡眠を作ることができる。同じ時間仮眠しても、仰向けと前傾側臥位 では、疲れのとれ方が全然違うことを実感できる。

このの眠り方は仮眠だけではなく、もちろん夜の睡眠にも適している。うつぶせ寝をして呼吸量を増やすことが、睡眠の入り始めの30分程度は重要だ。初めはうつ伏せで眠っても、30分から90分程度で寝返りをして、朝になって目覚めた時には仰向けになっている。今までずっと仰向け寝をしてきた方は、仰向けにで呼吸をするように筋肉は学習している。これをうつぶせ寝で呼吸するように、再学習させる必要がある。

呼吸に関係する筋肉が動きを学習し、実践できるようになるには4日から2週間かかる。最初の3日までは息苦しさや首や腰の痛みを感じることもあるが、まずは4日続けてみよう。筋肉が睡眠中の新しい動きのパターンを学習すると、それ以降は息苦しさや痛みはなくなる。2週間試した後で、試しに仰向けで眠ってみると、喉や舌が重力で上から押さえられ、気道が狭くなっていることを感じるはずだ。

昼間の眠気が強いとき

もし、ある程度、睡眠時間が確保できたのに、昼間に眠くなる場合は、いびきや無呼吸か歯ぎしりをしている可能性がある。先ほどの前傾側臥位で眠る方法は、いびきや無呼吸の改善になるが、歯ぎしりも改善する。

いびきの対策として、もう一つ試していただきたいのは口テープだ。朝目覚めたら、口の中がカラカラになっていることはないだろうか?睡眠中に口呼吸だといびきや無呼吸も起こりやすい。そこで弱めのサージカルテープを口に閉じるように縦に貼って眠ってみる。鼻呼吸が不十分だと勝手に自分ではがす。目覚めた時にはがしていなかったら鼻呼吸ができたことになる。

歯ぎしりは自分ではなかなか自覚することができないが、目覚めた時に顎のだるさがあったり、口内炎ができやすかったりする人は、睡眠中に歯ぎしりをしている可能性がある。また、昼間の眠気があり、その眠気覚ましのためにカフェインを飲む習慣があったら、そのカフェインが歯ぎしりを増強している可能性もある。

歯ぎしりをしていると、マイクロアローザルといって、自覚的にはずっと眠っているが、脳波上はプツプツ睡眠が途切れている現象が起こる。こうなると熟眠感が得られず、そのぶん昼間に眠くなる。そして、眠気覚ましにカフェインを飲むという悪循環に陥るのだ。

カフェインは、脳内から排除するのに一週間かかる。そこで一週間やめてみて、眠気が少し楽になっていたら、先ほどの悪循環にはまっていたということになる。そこから、好んで飲むカフェイン飲料のみに限定し、習慣的に飲むカフェインを避けていけば、過剰に眠気が出ることを防ぐことができる。

まとめ

普段の習慣はなかなか変えられない。無理に習慣を変えようとせず、その行為は脳にとってどんな意味があるのかを知り、その上で対処法を考えよう。

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